寝るだけでお金がもらえる、と度々話題になる治験バイト。
一泊で5万円以上や、2週間近くの泊まり込みで30万円以上の負担軽減費(謝礼もしくは協力費とも言う)が出るなど、他のバイトと違ってかなり高額になるのが一般的です。
そんな治験ですが、なぜこのような高額になるかご存知でしょうか?
単純に考えれば真っ先に思いつくのが「最悪○んじゃうから」という怖い理由なんですが、そうではありません。
謝礼の金額が決まる要素
結論から言ってしまうと、副作用が強い=負担軽減費が高額なのは間違いです。
謝礼金が高額となる要因としては、大まかにまとめると下記の二つが挙げられます。
- 拘束時間
- 製薬会社の事情
拘束時間の長さ
アルバイトであれば、働けば働くほどお金が入ってきます。
それと同じで、治験は単純に拘束時間が長めです。
例えばこちらの案件。
3泊×2回の本試験で142,000円。
大学生のアルバイトの平均月収が3万円らしいので、4倍以上の10万越えは学生にとってはかなり誘惑される金額ですよね。僕としては3万円のアルバイト代で学生生活を送れる人たちに驚きですが……。
治験は確かに大半の時間は寝て過ごせますが、1日のスケジュール自体は細やかに決まっています。
投薬日は起床時間が早まる事もあるので、ずっと寝ていられる訳ではありません。
消灯〜起床時間は大体9時間ほどで、起きている間は採血・心電図・血圧などを測る検査が事前に決められている時間で行われます。もちろん、この間にパチンコ屋に行って魚群を出す事もできませんし、ランチを食べに外出する事も不可能です。
上記の案件を、病院内に拘束されていると考えて時給計算してみましょう。
寝ている時間は大体8時間ほどなので、1日あたり約15時間くらいの拘束時間。
初日と最終日は大抵の治験は半日で終わるので、半分の7時間半とすると、合計時間は(15時間×丸3日分)×2回で90時間。
142,000円÷90で時給はおよそ1,570円。
普通のアルバイトと比べるとやはり高額ですが、寝ている間も病院内に拘束され、一切外出できない点を考えると、そこまで高いとは言えません。
ちなみに通院のみで済む治験もありますが、案件自体はかなり少ないです。
もちろん、こちらは拘束時間が短く、報酬も全体的にみると低額になります。
対して、泊まり込みで行う治験は拘束時間がその分長くなるため高額になります。
例外を除き、長くなればなるほど謝礼は高いです。
薬を飲む&検査を行うなどの時間以外は基本的にフリーですが、新薬が体内でどのような影響を及ぼしているかを詳細に記録しなければならないため、検査自体は事細かに行われます。
タバコも酒もNG。
そのような拘束される時間と、それに伴う心労的負担を考えての金額設定のようです。
製薬会社の事情
上記の理由は、あくまで一般的なもの。
新薬の臨床試験の負担軽減費は、製薬会社が負担しています。なので、製薬会社目線で考えてみましょう。
TVでアホみたいにCMを流しているので察しがつくと思いますが、製薬会社はめちゃくちゃ儲かります。薬自体がかなり高額でも、患者の代わりに国が負担してくれますからね。
ただ、それと同時にかなり高額な支出を強いられる費用もあります。それが新薬の研究開発費です。
この研究開発費には、もちろん治験段階の費用も含まれます。
製薬会社としてはさっさと国から許可を貰って病院に売りたい訳ですが、その許可を得るためには「この薬は効き目があって安全だよ」という国からのお墨付きを得る必要があります。
そのための試験が治験なんですね。
治験は通常、健康な人に対して行い副作用などを検証する第一相試験、少数の患者に治験薬を投与し用法・用量を調べるための第二相試験、多数の患者を対象にし既存の薬品との比較を検証する第三相試験に分類されます。
この3行程を済ますためには、かなりの人数が必要になります。
製薬会社にとって困るのは、研究(治験)段階が長引く事。その分コストを割く羽目になりますからね。
治験に行こう!って人の大半は、「新薬を待っている病人さん達を助けよう」なんて気持ちは持っていません。
なんせ、言い方を変えれば実験体になるわけですからね。心の何処にも不安を抱かない人はいないでしょう。
そんな人が望んでいるのは高額な負担軽減費。
製薬会社は手っ取り早く新薬を出して利益を出したいから「負担軽減費を高く設定する」っていうのが製薬会社目線で考えた理由です。
同じ泊数で謝礼金に違いが出る理由は?
治験に一度でも興味を持って、治験サイトで案件をみた事がある方なら分かると思いますが、案件によっては同じ泊数なのに負担軽減費(謝礼)が変わる事があります。
一概にこれが原因!という理由は無いので、参考程度にどうぞ。
製薬会社の懐具合
つまらない事情ですが、本当のようです。
資金力のある大手製薬会社は、治験をパパッと済ませたいために高額に負担軽減費を設定する、と言う話を聞きました。
これは勘違いかもしれませんが、協力費が高ければ高いほど綺麗な施設で治験を受けたような気がします。
もちろん、3回しか治験に行っていない筆者の勘違いかもしれませんが。
ジェネリック医薬品か否か
『ジェネリック医薬品』と言う単語を、生きていたら一度は聞いた事があると思います。
成分が既存の薬品と全く同じで、効能も同じ薬品の事です。「後発医薬品」とも呼ばれます。
何が後発なの?って話なんですが、ジェネリック医薬品は新薬の特許(原則20年)が切れて初めて作られる薬になります。
新薬の特許は、どれだけ優れたものでも最大25年で特許が切れて国民全体の財産と考えられるようになります。
そんな理由で別の会社が同じ薬品を作って売るわけですが、薬品である以上、成分が同じでも新薬試験は必要となります。
その際に治験も行われるわけですね。
成分が全く同じで副作用などもほぼ把握している、となると、製薬会社としては負担軽減費をどうしたくなるか分かりますね。
特別な要素がある場合
こちらは個人的な推測。
特別な試験がある場合、高額になる可能性が高いような気がします。
今まで見た案件で言えば、海外へ行って治験を受けるケースや、坊主頭しか参加できない治験などがそれに当たります。ちなみに、坊主頭は何かの軟膏の治験だったかと。
このような治験は、通常の健常者向けの治験と異なり人が集まりにくいです。
そのため、結果として高額になるのでは、と考えられます。
居酒屋の扉口に貼られてあるバイト募集の張り紙と同じ理論ですね。
また、今まで行った治験で一番少ない本試験人数が4人でしたが、その時の謝礼金も他の案件に比べると多かったです。
その時の試験薬は、飲み薬でも貼り薬でもなく点滴投与でした。募集している案件の中では点滴投与は結構珍しいです。
なんとなーく危険度の度合いが上がる分(個人の感想)、負担軽減費が高くなったのかな。
副作用の強弱、と言う理由はなさそうです。
どのみち、異常があった場合は全てクリニック側が負担してくれますし。起こるかどうか分からない副作用で、負担軽減費を設定する意味は無いでしょう。
最後に
勘違いされてしまいそうなので補足しますが、僕は製薬会社やクリニック側の回し者ではありません。単に楽して金が欲しかった貧乏人です。
だって、高い案件は1泊で5万円(貼り薬)とか、4泊5日2回で19万(飲み薬)とかですよ?
負担軽減費と言う名目だから、税金とかも関係ないし。
当時貧乏学生だった東京暮らしの大学生には、どれだけ救いとなったか分かりません。
もちろん、楽に稼げる分辛い事もありますが。その辺の体験談は別記事でどーぞ。
上記の記事でも話している事ですが、今まで参加した治験で泡吹いて倒れた人とかは見た事がありません。
まぁ、と言っても合計したら今まで見てきた被験者は100人もいないだろうし、飛行機で墜落したのを見た事ないから安全、と言ってるのとほとんど変わりありませんが。
治験に少しでも興味を持たれたら、まずは治験を募集しているサイトで案件をご覧ください。
僕が使っていたサイトはJCVN治験ボランティア と、大手のCVSです。
製薬会社側は負担軽減費を餌に被験者を募るのはよろしく無いようで、実際の謝礼はサイトに登録してからでないと見れないようになっています。
当たりの案件は埋まりが早いので、こまめにチェックするのが吉です。
おしまい。
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